sonatine505の日記

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映画鑑賞『愚行録』

善きこととは何か?善き行いとは何か?
冒頭での妻夫木聡が出てくるシーンは、見ている者を惑わす。
お年寄りに席を譲らない若者。それを叱責する中年男性。じゃその若者が足が悪かったらどうなのか?では、その若者が足が悪い演技をしているだけだったら?
劇中で妻夫木扮する週刊誌記者は、席を譲るが、足が悪いフリをして、車中に倒れ込み、「善き行い」をした中年男性との立場の逆転を図る。
バスから降り、見えなくなると普通に歩きだす。

ここを見て、「ユージュアル・サスペクツ」のラストシーンを思い出したが、今回は冒頭シーン。

映画は、妻夫木聡扮する週刊誌記者のインタビュー、平田満演じる精神科医が妻夫木の妹役の満島ひかりへの精神鑑定で物語が進んでいく。静かに。少しだけ音を立てて。
満島ひかりが精神鑑定を受けているシーン、妻夫木聡との面会シーンの生気を感じないあの表情はさすが。なんなんだあのザラザラ感は。妻夫木聡の時おり見せる感情の起伏に物語がドライブするのを期待するが、裏切られる。あくまでも淡々と。

パンフレットで石川慶監督と脚本の向井康介さんが「だれも泣かない映画」にすると初めに決めたと書かれていたが、その通りになっている。観客すらも泣くに泣けない。あくまでの淡々と。
劇中の流れる低音の電子音が不穏な感じを演出する。
泥水が地面を這って、こちらを横切って流れていく様を見せられているような映画。
 
今スタバで、これを書いているが、たまたまマンドリンとギターでの生演奏で「菊次郎の夏」のテーマが演奏されている。
そう、この映画もオフィス北野配給だった。